会長挨拶

第36回 日本バイオフィルム学会学術集会の開催に向けて

東邦大学医学部微生物・感染症学講座
教授 舘田 一博

東邦大学医学部微生物・感染症学講座 教授 舘田 一博

2022年9月24日(土)~25日(日)に横浜のはまぎんホールヴィアマーレで第36回日本バイオフィルム学会学術集会を開催させていただくことになりました。1987年にBacterial Adherence研究会が発足し、2000年にはBacterial Adherence&Biofilm研究会と名称を変更、2014年に日本バイオフィルム学会となり今日を迎えています。時代とともにバイオフィルムに注目が集まり、医学・歯学・薬学・獣医学の領域だけでなく、自然界・工業界を含め微生物が存在するところで必ずと言っていいほどバイオフィルムが関与していることが明らかとなっています。東邦大学では難治性・慢性感染症、耐性菌、劇症型感染症の診断や治療に関して研究を行ってきました。特に感染症の難治化・慢性化においてバイオフィルム形成はもっとも重要な要因であることに疑いはありません。臨床現場で“効くはずの薬が効かない”といった症例で、しばしばカテーテルなどの異物や膿瘍形成、すなわちバイオフィルムが原因と考えられる症例に遭遇します。医療の現場において、バイオフィルムの形成のメカニズムや治療法・予防法に関して多くの研究が行われていますが、まだまだ解決には程遠い状態と言わざるを得ません。単細胞生物である微生物が、多細胞的な特徴を示すのがバイオフィルムの本質であり、微生物の進化と生き残り戦略の視点でバイオフィルム研究を進めていくことの重要性を痛感しております。

第36回日本バイオフィルム学会の直前に、第10回国際レジオネラ会議を同じ横浜はまぎんホールで開催させていただくことになりました(2022年9月20日~24日)。ご承知のようにレジオネラも自然界の水系に広く存在する細菌であり、冷却塔、水道、温泉などでバイオフィルムを形成して生息することが知られています。このような背景のもと野村暢彦理事長のお許しをいただき、また機能水研究振興財団堀田国元理事長のご協力をいただき、9月24日の午前中に日本バイオフィルム学会、国際レジオネラ会議、日本機能水学会の合同シンポジウムを開催させていただけることになりました。レジオネラのバイオフィルムに関するトピックスだけでなく、機能水の働き、微生物の形成するバイオフィルム全般にわたって3学会から多くの研究者にご参加いただけることを期待しています。